1. はじめに:薬剤師からのメッセージ
今日は「すい臓がん」をテーマにお話ししたいと思います。
皆さまは「すい臓がん」、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
自覚症状がなく、「見つかったときにはもう遅いのでは……」と不安に感じる方も多いかもしれませんね。
確か3年ほど前に、シーナ&ザ・ロケッツの鮎川誠さんが、すい臓がんで亡くなりました。
シーナ&ザ・ロケッツ、「ユーメイ・ドリーム」、懐かしいですね、大好きでした。確かシーナさんはだいぶ前に亡くなったと記憶しています。
すい臓は、お腹の非常に深い場所にあるため、異常があっても気づきにくく「沈黙の臓器」と呼ばれています。確かに以前は早期発見が難しい病気とされてきました。しかし、現代の医学は驚くほど進歩しています。今回は、薬剤師の視点から「これだけは見逃してほしくない体のサイン」と、前向きに早期発見を目指すための知恵を、分かりやすく丁寧にお伝えしていきますね。
2. すい臓の役割とは?―お腹の奥で働く「縁の下の力持ち」
そもそも、すい臓がどこにあって何をしているのか、意外と知る機会が少ないものです。
すい臓は胃のちょうど裏側にあり、背骨に近い場所に位置しています。専門的には「後腹膜臓器(こうふくまくぞうき)」と言いますが、これは「お腹を包む膜の外側、背中側にある臓器」という意味です。形は「オタマジャクシ」のように、頭が少しふっくらした細長い形をしています。
この小さな臓器は、私たちの命を支える2つの重要な役割を担っています。
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食べ物の消化を助ける: 「アミラーゼ」や「リパーゼ」などの強力な消化酵素を含む「膵液(すいえき)」を作り、十二指腸へと送り込みます。食べたものの栄養をしっかり吸収できるよう助ける、まさに「消化の援護射撃」役です。
- 血糖値を整える: 「インスリン」というホルモンを作っています。血液中の糖分の量(血糖値)を一定に保つためのコントロールセンターとして、24時間休まず働いてくれています。
3. これって、すい臓がんのサイン?見逃さないでほしい「体の変化」
「すい臓がんは症状が出ない」と思われがちですが、実は20mm以下の小さながんであっても、8割以上の方が何らかのサインを感じているという驚きのデータがあります。
体からの小さなSOSに気づくことが、未来を守る大きな鍵となります。
- 黄疸(おうだん)と「かゆみ」: 白目や皮膚が黄色っぽくなる現象です。また、これに伴って「全身にかゆみ」が出ることがあります。皮膚のトラブルかな?と思っても、目が黄色くないか鏡でチェックしてみてください。
- 尿と便の色の変化(なぜ変わる?): すい臓にがんができると、隣を通る「胆管(たんかん)」という胆汁の通り道を圧迫してしまいます。すると、本来便と一緒に流れるはずの色素がせき止められ、血液に逆流してしまいます。その結果、尿の色が「紅茶やオレンジジュース」のように濃くなり、逆に便の色が「白っぽく粘土のような色」になるのです。
- お腹や背中の違和感: みぞおち辺りの重苦しさや、原因不明の背中の痛みです。すい臓は背中に近いため、整形外科に行っても治らない背痛が実はすい臓からのサインだった、ということもあります。
- 体重減少と食欲不振: ダイエットをしていないのに、1ヶ月で数キロも体重が減ってしまうのは、体が発している重要な警告です。
4. 【特に注意!】糖尿病の「急な悪化」はすい臓からのSOS
すい臓がんを考えるときに、最も注目するのが「血糖値」の変化です。
特に気をつけていただきたいのが、ご存じの方も多いと思う、「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」という数値です。
これは、「過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均」を示す、糖尿病管理の重要な指標です。
これがすい臓がんを考えるときに、大きな目安となります。
- 「今まで安定していたHbA1cが、生活習慣を変えていないのに急に上がった」
- 「50歳を過ぎてから、初めて糖尿病と言われた」
これらはすい臓の機能が低下しているサインかもしれません。実際に、糖質制限を徹底していたのにHbA1cが7.2→7.7→8.2と「うなぎのぼり」に上昇し、精密検査ですい臓がんが見つかったという方もいらっしゃいます。糖尿病はすい臓がんのリスクを2倍に高めるという報告もありますので、数値の急変は決して見逃さないでくださいね。
5. あなたは大丈夫?知っておきたい「なりやすい人」のリスクチェック
ご自身の状況や生活習慣を振り返って、以下の項目をチェックしてみましょう。
- 年齢: 50歳以上である
- 嗜好品: 喫煙習慣がある、またはお酒を大量に飲む
- 体型: 肥満気味である
- 家族歴: 血縁者にすい臓がんになった人がいる
- 持病: 糖尿病、または慢性膵炎(まんせいすいえん)がある
これらに当てはまる項目が多い方は、人より少しだけ「すい臓を労ってあげる必要がある」と考えて、意識的に検査を受けることが大切です。
6. 早期発見で未来が変わる:検査の種類と新しい選択肢
「すい臓がんは治らない」というのはもう昔のお話です。早期発見できれば、完治の可能性はぐんと高まります。
- 驚きの生存率: がんの大きさが10mm以下で見つかれば、5年後の生存率は80%以上。10〜20mmの間でも、50%0.2mmという目に見えないほど小さながんを特定することに成功した例もあります。医療の力は、確実に「奇跡」を「現実」に変えています。
- どの検査を受けるべき?: 一般的なエコー検査(超音波)は手軽ですが、お腹のガスや脂肪で見えにくいという弱点があります。もし気になる症状があるのにエコーで「異常なし」と言われた場合は、より詳しく分かる「造影剤(ぞうえいざい)を使ったCT検査」について主治医に相談してみるのも一つの知恵です。
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新しい検査の選択肢: 最近では自宅で尿を採取して送るだけで、ステージ1というごく早期からのリスクを判定できる検査方法もあるようです。
自費になりますが、オーソライズされていると私は感じました。多くの医療機関で導入されています。自己判断で検査してみるのも良いでしょう。
一方、話題の「線虫(せんちゅう)による検査」は、私も期待していたのですが、現時点では有効性のデータがまだ十分ではなく、これからかなと感じています。主治医や私たち薬剤師に、どの検査が自分に合っているか相談してみてください。
7. おわりに:薬剤師からの最後のアドバイス
「自分は多分大丈夫だろう」という根拠のない思い込みを、「検査をしたから大丈夫」という根拠のある安心に変えてみませんか?
実は、自治体が行う一般的な「がん検診」には、すい臓がんの検査が含まれていないことがほとんどです。だからこそ、ご自身で一歩踏み出し、チェックする機会を作ることが何よりも大切になります。
体は、言葉にはならない小さなサインを一生懸命発しています。少しでも「おかしいな」と感じたり、血糖値のことで不安があったりした時は、「街の科学者」薬剤師にお話しください。皆さまがこれからも笑顔で、健やかな毎日を過ごせることを心から願っています。
