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多発性骨髄腫と診断されたあなたへ:高齢の患者さんとご家族が知っておきたい治療と生活の注意点


「多発性骨髄腫」

聞き慣れない病名を告げられ、ご本人もご家族も、大きな不安を感じていらっしゃることと思います。

しかし、どうかご安心ください。多発性骨髄腫の治療は劇的に進歩し、今では日常生活を送りながら、病気と上手に付き合っていくことも可能になりました。

この記事では、特にご高齢の患者さんとご家族が安心して治療に臨めるよう、日常生活で気をつけていただきたいこと、そして知っておくと役立つ情報を、分かりやすく解説します。

 

1. 「多発性骨髄腫」とはどんな病気ですか?

多発性骨髄腫は、「血液のがん」の一種です。私たちの体には、骨の中心にある「骨髄(こつずい)」という場所で血液が作られています。この骨髄の中にあって、ウイルスや細菌から体を守る役割を持つ「形質細胞」という血液細胞が、がん化して無秩序に増えてしまうのがこの病気です。

がん化した形質細胞(骨髄腫細胞)が増えることで、正常な血液を作る働きが妨げられたり、骨がもろくなったりします。特にご高齢の方では、次のような症状がきっかけで病気が見つかることがあります。

 

 貧血 めまいや立ちくらみ、息切れ、だるさなどを感じやすくなります。

 骨の痛み 特に腰痛を訴える方が多く、骨がもろくなるため、軽い衝撃で骨折してしまうこともあります。

• 感染症への抵抗力の低下 免疫力が落ちるため、肺炎などの感染症にかかりやすくなります。

特にご高齢の場合、こうした典型的な症状だけでなく、「なんだか最近元気がない」「持病の心臓の調子が悪い」といった、他の病気の悪化として貧血の症状が現れることも少なくありません。ご家族の方は、こうした変化にも気を配ってあげてください。

 

 

2. ご安心ください。高齢者の治療は大きく進歩しています

30年ほど前、多発性骨髄腫は治療が非常に難しく、平均生存期間は3年ほどと厳しい病気でした。

しかし、2000年代に入ってから新しい薬が次々と登場し、この20年で治療は劇的に進化しました。現在の治療の目標は、病気を完全に叩き潰すことだけではなく、「病気と付き合いながら、自分らしい日常生活を送ること」に変わってきています。

京都府立医科大学の黒田純也医師は、「電車の中で会ったら、多分病気の人だとわからない。それくらい回復する」と語っています。実際に、多くの方が通院で治療を続けながら、元気に毎日を過ごしておられます。

特に高齢の方の治療では、一人ひとりの体力や持病、生活状況に合わせて薬の量や種類を細かく調整する「オーダーメイド治療」が基本です。決して無理な治療から始めるわけではありませんので、その点はご安心ください。

 

3. 【アドバイス】日常生活で特に気をつけたい3つのこと

ここからは、この記事の最も大切な部分です。ご高齢の患者さんが治療を続けながら安全に過ごすために、特に注意していただきたい3つのポイントを具体的にお話しします。

 

3.1. 骨折を防ぐための「転倒予防」

多発性骨髄腫では骨がもろくなりやすいため、転倒による骨折は絶対に避けなければなりません。ご自宅の中の環境を一度見直してみましょう。

 家の中を整理整頓し、床の段差をなくす:つまずきの原因になるものを片付けましょう。

• 滑りやすい場所には滑り止めマットを敷く:お風呂場や台所、玄関などが特に注意が必要です。

• 夜間は足元を照らす常夜灯をつける:夜中にトイレへ行く際なども安心です。

• 重い物を持つ、中腰になるなど、腰に負担のかかる動作を避ける:姿勢にも気を配りましょう。

また、痛みがない場合は、骨や筋肉を弱らせないために散歩などの軽い運動も推奨されます。ただし、どの程度の運動が良いかは個人差が大きいため、必ず事前に担当医に相談してから行うようにしてください。

 

3.2. 命に関わる「感染症予防」

病気そのものや治療の影響で、体の免疫力は低下しています。普段なら何でもないような風邪でも重症化しやすいため、感染症対策は非常に重要です。

• こまめな手洗い・うがい:基本ですが、最も効果的な予防法です。

 外出時のマスク着用と人混みを避けること:特に感染症が流行する季節は注意しましょう。

• 口の中を清潔に保つための丁寧な歯磨き:口の中の細菌が原因で肺炎などを起こすことがあります。

そして、特に強くお勧めしたいのが**「肺炎球菌ワクチン」の接種**です。多発性骨髄腫の患者さんは、病気の影響で肺炎球菌という細菌に対する抵抗力が極端に弱くなることが分かっています。そのため、このワクチンは接種が強く勧められています。

 

3.3. 体力を支える「食事と薬の注意点」

治療を乗り切るためには、バランスの良い食事で体力を維持することが大切です。食欲がない時は無理せず、ゼリーやスープなど、食べられるものを少しずつ工夫して摂るようにしましょう。

そして、特に注意していただきたい点が2つあります。

 カルシウムの摂りすぎに注意 「骨がもろくなるならカルシウムを」と考えがちですが、自己判断でサプリメントなどを過剰に摂るのは大変危険です。血液中のカルシウム濃度が上がりすぎる「高カルシウム血症」という危険な状態を招く恐れがあります。カルシウム製剤の服用については、必ず医師の指示に従ってください。

• 骨の薬を始める前の歯科受診 骨を強くする薬(ビスフォスフォネート製剤など)を使い始める前には、必ず歯科を受診してください。このタイプの薬には、まれに「顎骨壊死(がっこつえし)」という副作用があり、口の中に虫歯や歯周病などの問題があると起こりやすくなります。治療開始前に口の中をきれいにしておくことが、副作用予防のために不可欠です。

 

4. 心配事や困ったときの向き合い方

治療中は、体だけでなく心にも様々な負担がかかります。一人で抱え込まず、周りを頼ることが大切です。

 

4.1. 体の痛みや心のつらさは我慢しないで

体の痛みはもちろん、不安で眠れない、気分が落ち込むといった心のつらさも、我慢する必要はまったくありません。それらは病気や治療の過程で誰にでも起こりうる自然な反応です。つらいと感じたら、すぐに担当医や看護師に伝えてください。必要であれば、痛みを和らげる専門家(緩和ケアチーム)や、心の専門家(精神腫瘍医など)のサポートを受けることもできます。

 

4.2. ご家族の方へ:ご自身のケアも大切です

患者さんを支えるご家族も、大きな不安やストレスを感じるのは当然のことです。患者さんのことで頭がいっぱいになりがちですが、ご自身の休息を意識的にとったり、友人や相談窓口に気持ちを話したりすることも忘れないでください。「ご家族が元気でいることが、患者さんの安心にもつながります」。少し休むことも、大切なサポートの一つです。

 

5. 治療費の負担を軽くする制度について

治療が長期間にわたるため、経済的な不安を感じることもあるでしょう。その負担を軽くするための公的な制度がありますので、ぜひ知っておいてください。

まず、診断を受けたらすぐに行っていただきたい手続きがあります。それは、ご自身が加入している健康保険(お手元の保険証をご確認ください)の窓口へ**「限度額適用認定証」**を申請することです。

この認定証を事前に病院の会計窓口へ提示しておけば、高額な治療を受けても、窓口での支払いが自動的に自己負担の上限額までで済みます。後から払い戻しを申請する手間も、一時的に大きなお金を立て替える負担もなくなりますので、早めに検討すると安心です。

制度の詳細は少し複雑ですので、詳しいことは病院にある「がん相談支援センター」や「医療相談室」の専門スタッフに相談するのが最も確実で安心です。遠慮なく活用してください。

 

まとめ:希望を持って、チームで治療に臨みましょう

この記事でお伝えしたかった大切なポイントを、最後にもう一度まとめます。

• 多発性骨髄腫の治療は大きく進歩しており、高齢だからと諦める必要はまったくありません。

• 日常生活では「転倒予防」と「感染予防」が、ご自身の体を守る上で非常に重要です。

• 痛みやつらさ、不安なことは一人で抱え込まず、遠慮なく医療スタッフに相談してください。

患者さんご本人、支えるご家族、そして私たち医療スタッフ。全員がひとつの「チーム」です。

希望を持って、一緒に力を合わせて治療に臨んでいきましょう。

 

 

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療の判断は必ず主治医・医療スタッフにご相談ください。

 

 

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