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高齢者の白血病:希望をすてないで。薬剤師が解説する最新治療と心の準備

 


突然の「白血病」告知に、心が押しつぶされそうになっているあなたへ


「あなたは白血病です」

医師からそう告げられた瞬間、多くの方が「目の前が真っ暗になった」「頭の中が真っ白になった」とおっしゃいます。ご本人様も、そばで支えるご家族様も、あまりの衝撃に言葉を失い、絶望的な気持ちに襲われていることでしょう。

現役の薬剤師として、また医療情報をお伝えする立場として、この記事では、白血病と診断された高齢の患者様やそのご家族が、病気を正しく理解し、希望を持って治療に臨めるよう、専門用語をできるだけ避けて分かりやすく情報をお届けします。

まず、最もお伝えしたいことがあります。それは**「白血病はもはや不治の病ではない」**ということです。この数十年で医学は目覚ましく進歩し、治療法は大きく変わりました。どうか希望をすてないでください。まずは一緒に、病気について正しく知ることから始めましょう。


1. 「白血病」とはどんな病気?―まずは基本を知りましょう

白血病は、ひと言でいうと**「血液のがん」**です。

私たちの血液は、赤血球、白血球、血小板といった細胞でできており、酸素を運んだり、細菌と戦ったり、出血を止めたりと、生命を維持するために欠かせない役割を担っています。この大切な血液細胞は、骨の中心部にある「骨髄」という工場で、毎日休むことなく作られています。

白血病とは、この血液を作る機能ががん化し、異常な血液細胞(白血病細胞)が際限なく増え続け、正常な血液が作れなくなってしまう病気です。

白血病には、「急性骨髄性白血病(AML)」をはじめ、がん化する細胞の種類や進行の速さによっていくつかの種類があります。そして大切なのは、**「種類によって治療法が異なる」**という点です。主治医は詳しい検査を通して、あなたの白血病のタイプを正確に診断し、最適な治療方針を立てていきます。


2. 大きな希望:白血病治療の目覚ましい進歩

白血病に対して、「やがて死に至る病」という古いイメージをお持ちかもしれません。しかし、その固定観念は、もはや過去のものです。

近年、次に紹介するように、高齢の患者様を対象とした治療の選択肢が飛躍的に増えたことで、年齢を理由にあきらめる必要はなくなりました。

この事実は、**「適切な時期に、適切な治療を行えば、白血病はもはや死ななくて済む病気になった」**ことを力強く示しています。医学の進歩により、白血病は治癒を目指せる時代になったのです。


3. 高齢の方向けの新しい治療法―体への負担が少ない選択肢

「高齢だから、体力に自信がない」「持病があるから、強い治療には耐えられないかもしれない」 そうした不安をお持ちの方も多いでしょう。確かに、従来の強力な化学療法(抗がん剤治療)は、お身体への負担が大きいものでした。しかし近年、高齢の患者様や持病をお持ちの方でも安心して受けられる、体への負担が少ない新しい治療法が次々と登場しています。

1. 飲み薬と注射を組み合わせた新しい治療

高齢の方や、強力な化学療法が難しい急性骨髄性白血病(unfit-AMLと呼ばれ、ご年齢や他のご病気から従来の強い治療が適さないと判断される患者様を指します)に対する標準治療の一つとして、「ベネトクラクスとアザシチジン併用療法」があります。これは、「ベネトクラクス」という飲み薬と、「アザシチジン」という注射薬の2種類を組み合わせることで、相乗効果を発揮し、高い治療効果が示されています。もちろん副作用が全くないわけではなく、血液への影響(骨髄抑制)など注意すべき点はありますが、経験豊富な医療チームがしっかりと管理することで、従来の強力な治療に比べてお身体への負担を抑えることが可能です。

2. がん細胞を狙い撃ちする薬

「分子標的薬」は、がん細胞が増殖する原因となっている特定の分子だけを狙い撃ちする薬です。従来の抗がん剤が、がん細胞だけでなく正常な細胞にもダメージを与えていたのに対し、分子標的薬はがん細胞に直接作用するため、正常な細胞への影響を最小限に抑え、副作用を軽減しつつ高い治療効果が期待できます。 これは、患者様一人ひとりの白血病細胞が持つ遺伝子の特徴を詳しく調べることで、最も効果的な薬を見つけ出す「個別化医療」の進歩によるものです。

3. 高齢でも可能になった移植治療

かつて、造血細胞移植(骨髄移植など)は、身体への負担が大きいため、高齢の患者様には難しい治療法とされていました。しかし、移植前に行う処置(前処置)の進歩により、身体への負担を軽減した「ミニ移植」などが普及し、状況は大きく変わりました。

現在では65歳、時には70歳を超える方でも移植が実施可能になっています。実際に、日本国内の移植件数を見ると、60歳以上の患者様の割合が増え続けており、年齢を理由に治療をあきらめる必要はなくなっています。

(出典:一般社団法人 日本造血細胞移植データセンター 2023年度 日本における造血幹細胞移植 スライド集)

4. 治療と向き合うための心構えと準備

治療法について少し理解が深まったところで、次に治療と向き合う上での心構えと準備について、4つの重要なポイントをお伝えします。

  • 主治医との対話を大切に(インフォームド・コンセント) 治療は、医師から病状や治療方針について十分な説明を受け、ご自身が納得した上で同意(インフォームド・コンセント)して初めて始まります。分からないことや不安なことは、遠慮せずに質問してください。「こんなことを聞いたら迷惑かな」と思う必要は全くありません。事前に聞きたいことをメモしておくと、落ち着いて話ができます。
  • セカンドオピニオンという選択肢 主治医以外の医師に治療方針の意見を聞く「セカンドオピニオン」は、すべての患者様に認められた権利です。主治医が提案する治療法が最善なのか、他に選択肢はないのか、別の専門家の意見を聞くことで、より深く納得して治療に臨むことができます。
  • 副作用への備え 抗がん剤治療には副作用が伴いますが、過度に心配しないでください。例えば、多くの方が心配される吐き気についても、効果的な吐き気止めの薬が登場するなど、昔に比べて副作用を和らげる方法は格段に進歩しています。 経験豊富な医療チームが、あなたのつらさを最小限に抑えるよう、しっかりとサポートします。
  • 医療費の心配について 「治療費はどのくらいかかるのだろう」という経済的な不安も大きいと思います。しかし、日本には国民皆保険制度があり、高額な医療費の自己負担額に上限を設ける制度(高額療養費制度)など、負担を軽減する公的な仕組みが整っています。経済的な問題も一人で抱え込まず、病院にいるメディカルソーシャルワーカーなどの専門家にぜひ相談してください。

5. ご家族の方へ:「一番の応援団」として知っておいてほしいこと

「家族は第二の患者」という言葉があります。大切なご家族が白血病と診断され、ご家族もまた、ご本人と同じくらい、あるいはそれ以上につらく、不安な思いを抱えていることでしょう。

患者様を支えるために最も大切なのは、まずご家族自身が心と体の健康を保ち、冷静でいることです。治療は長期戦になることもあります。共倒れにならないよう、休息をとり、自分自身の時間も大切にしてください。

そして、ぜひお願いしたいのが、治療方針の説明に同席することです。ご本人は動揺して、医師の説明が頭に入らないことも少なくありません。ご家族が一緒に聞き、内容を理解することで、ご本人にとって大きな心の支えとなります。また、ご家族の中で情報を共有し、病院との窓口になる代表者(キーパーソン)を決めておくと、いざという時にスムーズな連携がとれます。


結論:あなたは、けっして一人ではありません

突然の白血病の告知は、本当につらい経験です。しかし、この記事でお伝えしたように、白血病の治療は飛躍的に進歩しており、特に高齢の方向けの体への負担が少ない選択肢も数多く増えています。

そして何より、忘れないでください。あなたには、治療に精通した主治医、看護師、薬剤師といった医療チームがついています。そして、何よりも心強い「一番の応援団」であるご家族がそばにいます。

あなたは、けっして一人ではありません。医療者とご家族がチームとなって、あなたを全力で支えていきます。
希望を持って、一緒に一歩ずつ前に進んでいきましょう。

 

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